発毛の軌跡

AGA治療の基本薬であるフィナステリド。その単剤療法は、多くの人にとって治療の入り口となりますが、メリットとデメリットを正しく理解した上で選択することが重要です。まず、フィナステリドのみで治療を行う最大のメリットは、そのシンプルさと始めやすさにあります。一日一錠の内服という手軽さは、治療を日常生活に組み込みやすく、継続のハードルを下げてくれます。また、ミノキシジルなどを併用する場合に比べて、副作用のリスクを相対的に低く見積もることができます。もちろんフィナステリドにも副作用はありますが、使用する薬剤の種類が少ないほど、体への負担や未知のリスクは軽減されると考えるのが自然です。万が一、体調に変化があった場合も、原因が特定しやすいという利点もあります。経済的な負担が少ないことも大きなメリットです。AGA治療は長期戦となるため、月々のコストは無視できません。フィナステリド単剤であれば、特にジェネリック医薬品を選択することで、治療費用をかなり抑えることが可能となり、経済的な理由で治療を断念するリスクを減らせます。一方で、デメリットも存在します。最も大きなデメリットは、発毛効果に限界があるという点です。フィナステリドの主作用は、あくまで抜け毛の抑制とヘアサイクルの正常化、つまり「守り」です。そのため、すでに薄毛がかなり進行している場合や、毛量を積極的に増やしたい「攻め」の治療を望む場合には、物足りなさを感じる可能性が高いでしょう。効果の実感までに時間がかかることもデメリットの一つです。抜け毛の減少を実感するまでに最低でも3ヶ月、現状維持や軽度の改善を確認するには半年から一年を要することもあり、即効性を求める人には向いていません。これらのメリット・デメリットを天秤にかけ、自分のAGAの進行度や治療に求めるゴール、そしてライフスタイルに合わせて、フィナステリド単剤療法が自分に適しているかを見極めることが、後悔のない治療への第一歩となります。