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なぜブリーチで髪は傷む?化学が解き明かすダメージの正体
多くの人が楽しむヘアブリーチですが、なぜあれほど髪が傷むのか、その化学的なメカニズムを正確に理解している人は少ないかもしれません。ブリーチが「はげる」という不安に繋がるのも、この深刻なダメージが根本にあります。ブリーチのプロセスを化学的に見ると、それは髪の内部で非常に強力な化学反応を引き起こす行為です。ブリーチ剤は主に、アルカリ剤(アンモニアなど)と酸化剤(過酸化水素)の二つから構成されています。まず、アルカリ剤が髪の表面を覆っているキューティクルをこじ開ける役割を果たします。これにより、薬剤が髪の内部へと浸透する道が作られます。次に、髪の内部に侵入した過酸化水素が、髪の色を決定しているメラニン色素を酸化分解します。この分解作用によって髪の色が抜け、明るい色になるのです。問題は、このプロセスがメラニン色素だけを狙い撃ちするわけではない、という点にあります。過酸化水素は、髪の主成分であり、強度や弾力を司っているタンパク質(ケラチン)にも作用し、これを破壊してしまいます。髪の骨格とも言えるタンパク質が破壊されると、髪の内部はスカスカの空洞だらけの状態になります。これが、ブリーチ後の髪がハリやコシを失い、パサパサになる直接的な原因です。さらに、キューティクルを無理やりこじ開けられた髪は、その扉を完全に閉じることができなくなります。開いたままのキューティクルの隙間からは、髪内部のタンパク質や水分がどんどん流出していってしまいます。これが、ダメージの進行をさらに加速させる悪循環を生むのです。このように、ブリーチによるダメージは単なる表面的なものではなく、髪の構造そのものを破壊する不可逆的な変化です。この化学的な事実を理解すれば、ブリーチ後の徹底したタンパク質補給や保湿ケアがいかに重要であるか、そして無計画なブリーチがなぜ切れ毛による薄毛のリスクを高めるのかが、明確に分かるはずです。