-
円形脱毛症の治療中にAGAが進行することはあるか?
円形脱毛症の治療に専念している最中に、「なんだか、脱毛斑とは別の部分、例えば生え際や頭頂部が薄くなってきた気がする…」という、新たな不安を感じることがあります。これは、円形脱毛症の治療中に、AGAが進行するという、悩ましい事態が起こっている可能性を示唆しています。円形脱毛症とAGAは、全く別のメカニズムで起こる脱毛症です。したがって、円形脱毛症の治療を行っていても、それがAGAの進行を抑制する効果を持つわけではありません。もし、あなたがAGAを発症しやすい遺伝的素因を持っていた場合、円形脱毛症の治療中であっても、AGAは自身の進行ペースに従って、水面下で静かに進行していくのです。むしろ、円形脱毛症を発症したこと自体による精神的なストレスや、治療で使われる薬の影響が、間接的にAGAの進行を後押ししてしまう可能性もゼロではありません。例えば、円形脱毛症の治療ではステロイドが使われることがありますが、このステロイドがホルモンバランスに影響を与え、AGAを悪化させる可能性を指摘する声も一部にはあります(ただし、明確なエビデンスは確立されていません)。では、このような状況にどう対処すればよいのでしょうか。まず、大切なのは、現在の主治医(多くは皮膚科医)に、その新たな悩みを正直に伝えることです。「円形脱毛症の治療とは別に、生え際の後退も気になっています。AGAの可能性はないでしょうか?」と相談してみましょう。経験豊富な皮膚科医であれば、円形脱毛症とAGAの両方を診断し、治療の優先順位や併用の可否について、適切なアドバイスをしてくれます。一般的には、まず炎症性の疾患である円形脱毛症の治療を優先し、症状が安定してからAGAの治療を検討する、という流れになります。円形脱毛症が活動期にある時に、AGA治療薬であるミノキシジル外用薬などを使用すると、頭皮への刺激となる可能性があるため、慎重な判断が必要です。一つの悩みが解決しないうちに、また新たな悩みが生まれることは、精神的に非常につらい状況です。しかし、そこから目を背けず、専門家である医師を信頼し、一つ一つの問題を冷静に切り分け、段階的に対処していくこと。それが、複雑に絡み合った脱毛の悩みを解決するための、唯一の正しいアプローチと言えるでしょう。