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AGAと円形脱毛症は併発するのか?その可能性と注意点
「生え際が後退してきた(AGAの兆候)と思ったら、後頭部に丸いハゲ(円形脱毛症)ができてしまった」このように、AGAと円形脱毛症が同時に、あるいは時期をずらして一人の人物に発症する、いわゆる「併発」は起こり得るのでしょうか。答えは「Yes」です。AGAと円形脱毛症は、それぞれ原因もメカニズムも全く異なる独立した疾患ですが、両方が併発するケースは決して珍しくありません。この二つが併発すると、薄毛のパターンが複雑になり、診断や治療が難しくなるため、いくつかの注意点を知っておくことが重要です。なぜ、異なる二つの脱毛症が併発するのでしょうか。そこには、共通の「悪化因子」として「ストレス」が関わっている可能性が考えられます。AGAの素因を持つ人が、仕事やプライベートで強いストレスに晒されると、血行不良やホルモンバランスの乱れによって、AGAの進行が加速することがあります。そして、その同じストレスが引き金となり、免疫機能の異常を誘発して、円形脱毛症を発症させてしまう。このように、ストレスという一つの要因が、二つの異なる脱毛症の導火線に、同時に火をつけてしまうことがあるのです。また、AGAが進行し、薄毛が目立ってきたこと自体が、深刻な精神的ストレスとなり、それが原因で二次的に円形脱毛症を発症してしまう、という悪循環に陥るケースも考えられます。AGAと円形脱毛症が併発した場合、治療はどのように進めるべきでしょうか。この場合、治療の優先順位と、それぞれの疾患に対するアプローチを、医師が慎重に判断する必要があります。一般的には、まず炎症性の疾患である円形脱毛症の治療を優先することが多いです。ステロイド外用薬などで、まずは免疫の異常な攻撃を抑え、炎症を鎮めることに注力します。円形脱毛症の症状が落ち着いた段階で、あるいは並行して、AGAの治療(フィナステリド内服薬やミノキシジル外用薬など)を開始・継続するという流れが基本です。自己判断で、円形脱毛症の部分にAGA用のミノキシジルを塗ったりすると、刺激で炎症が悪化する可能性もあり、非常に危険です。併発が疑われる場合、最も重要なのは、AGA専門クリニックだけでなく、まずは円形脱毛症の治療経験も豊富な「皮膚科」を受診することです。