薄毛や抜け毛という悩みは同じでも、その原因と症状、そして治療法が全く異なる二つの代表的な脱毛症、それが「AGA(男性型脱毛症)」と「円形脱毛症」です。両者を混同し、自己判断で誤った対処をしてしまうと、症状を悪化させ、貴重な治療の機会を失いかねません。効果的な対策の第一歩として、まずはこの二つの決定的な違いを正しく理解することが不可欠です。最も大きな違いは、その「原因」です。AGAは、遺伝的素因と男性ホルモン「DHT(ジヒドロテストステロン)」の作用が主な原因で起こる、進行性の脱毛症です。DHTが毛根を攻撃し、髪の成長期を短縮させることで、髪が細く、短くなっていきます。一方、円形脱毛症は、ストレスが引き金になることもありますが、その本質は「自己免疫疾患」であると考えられています。体を守るはずの免疫細胞(Tリン- パ球)が、何らかのきっかけで自身の毛根を異物と間違えて攻撃してしまい、その結果、髪の毛が突然抜け落ちる病気です。次に、「症状の現れ方」も全く異なります。AGAは、生え際(M字部分)や頭頂部(O字部分)といった、特定の部位から、時間をかけて「徐々に」薄くなっていくのが特徴です。髪が細くなる軟毛化を伴いながら、ゆっくりと進行します。対して、円形脱毛症は、コインのような円形や楕円形に、境界がはっきりとした脱毛斑が「突然」現れます。AGAのように徐々に薄くなるのではなく、ある日突然、ごっそりと髪が抜けるという形で発症し、脱毛部分の地肌はつるりとして見えます。また、「進行性」かどうかも大きな違いです。AGAは、治療をしなければ着実に進行し、自然に治ることはありません。しかし、円形脱毛症は、多くの場合、単発で自然に治癒するケースも少なくなく、必ずしも進行性とは限りません。ただし、多発したり、全頭型に移行したりする難治性のケースも存在します。原因が異なれば、当然「治療法」も異なります。AGAはDHTを抑制する内服薬(フィナステリドなど)や、発毛を促すミノキシジルが治療の主軸です。一方、円形脱毛症は、免疫の異常な働きを抑えるためのステロイド外用薬や局所注射、抗アレルギー薬などが用いられます。AGAと円形脱毛症は、似て非なる、全く別の病気です。自己判断は禁物。必ず専門の皮膚科医の診断を仰ぎ、自分の脱毛がどちらのタイプなのかを正確に特定することが、解決への唯一の道筋です。
AGAと円形脱毛症、似て非なる二つの脱毛症。その決定的な違いとは