半年前、私はスマホの画面に映る自分の頭頂部に絶望していました。薄く透けた地肌、頼りなくへたり込んだ髪。まだ三十代半ばだというのに、このままでは間違いなくカッパのようになってしまう。そんな恐怖に突き動かされ、私は震える手でAGAクリニックの予約ボタンを押しました。あれから半年、毎日欠かさず薬を飲み続けた私の体に何が起き、どう変わったのか。これは、一人の男が薄毛というコンプレックスと戦った、半年間のリアルな記録です。クリニックで処方されたのは、フィナステリドとミノキシジルの内服薬でした。医師からは「最初の1ヶ月か2ヶ月は、逆に抜け毛が増えるかもしれません」と告げられていました。いわゆる初期脱毛です。頭では理解していたつもりでしたが、実際にその時が来るとメンタルは崩壊寸前でした。飲み始めて3週間ほど経った頃、洗髪時の手につく抜け毛の量が明らかに倍増したのです。「薬のせいでハゲが加速しているのではないか」「自分には合わないのではないか」。そんな疑念が頭をよぎり、薬をゴミ箱に捨てたくなる衝動に駆られましたが、ネットの体験談を読み漁り、これは効いている証拠だと言い聞かせて耐え抜きました。この時期が一番辛かった記憶があります。変化を感じ始めたのは3ヶ月目を過ぎたあたりからです。初期脱毛が落ち着き、鏡で生え際をチェックしていると、これまで見たことのないような細い産毛が無数に生えているのを発見しました。最初はホコリがついているのかと思いましたが、指で触れると確かにジョリジョリとした感触があるのです。それは砂漠に芽吹いた新緑のように愛おしく、私は風呂上がりに育毛剤を塗り込みながら、その産毛たちに「頑張れ、太くなれ」とエールを送るのが日課になりました。同時に、全身の体毛も濃くなり始めました。手の甲や指の毛が目立つようになり、ミノキシジルの強烈なパワーを実感しました。副作用としての多毛症ですが、髪が生えるならこれくらいの代償は安いものだと割り切っていました。そして半年が経過した今、私の頭髪環境は激変しました。スカスカだった頭頂部は、光の加減によっては地肌が全く見えないほどに密度を取り戻しました。美容室に行っても「髪、しっかりしてきましたね」と言われるようになり、以前のように髪型で薄い部分を隠す苦労から解放されました。何より変わったのは心持ちです。風が吹いても、雨が降っても、下りのエスカレーターに乗っても、他人の視線を気にしなくて済む。この精神的な自由こそが、薬を飲み続けて得られた最大の報酬だと感じています。もちろん、薬代は毎月かかりますし、飲み忘れないように管理する手間もあります。性欲が少し落ちたような気もしますが、それが薬のせいなのか加齢のせいなのかは分かりません。ただ一つ言えるのは、あの時勇気を出して治療を始めて本当に良かったということです。