三十歳を過ぎた頃から、鏡を見るたびに後退していく生え際が私の心を重くしていました。インターネットで情報を集めては、AGAという現実から目を背けたくなる毎日。しかし、このままではいけないと一念発起し、専門クリニックの門を叩きました。カウンセリングで医師から提案されたのは、フィナステリドの内服とミノキシジルの外用を併用する治療法でした。それが最も効果的であることは理解できましたが、私はあえて「フィナステリドのみで始めたい」と申し出ました。その理由は三つあります。一つ目は、副作用への懸念です。治療について調べる中で、性機能の低下や頭皮のかゆみなど、様々な副作用の可能性を知りました。もちろん、そのリスクは高くないことも分かっていましたが、二つの薬を同時に始めることで、もし何か不調が出た時にどちらが原因なのか分からなくなるのが怖かったのです。まずは一つの薬から、ミニマムな形でスタートし、自分の体の反応を確かめたいと考えました。二つ目は、費用の問題です。AGA治療は自由診療であり、長期にわたる継続が前提です。併用療法は効果が期待できる分、当然コストもかさみます。まずはフィナステリドのみで、経済的な負担を抑えながら治療を習慣化できるか試してみたかったのです。そして三つ目は、治療への期待値です。私の望みは、フサフサになることよりも、まず「これ以上、薄毛が進行するのを止めたい」という一点にありました。医師からも、フィナステリドは抜け毛を抑制する効果が主であると説明を受け、私のニーズには合っていると感じました。服用を開始して一年。劇的な変化はありませんが、シャワーの時の抜け毛は明らかに減り、生え際の後退も止まったように感じます。何より「対策をしている」という安心感が、私の心を軽くしてくれました。まずはフィナステリドのみで。私にとって、それは地に足の着いた、最良の選択だったと確信しています。
私がAGA治療でフィナステリド単剤を選んだ理由